切り裂きジャックの正体は別に判明してない。世紀の謎は未だ闇のまま

 

 

世紀を超えた謎ともいえる Jack the Ripper 通称「切り裂きジャック」の正体がついに明かされたのでは、と先日話題になった。

 

注:ざっと概要を知りたい人は「今回見つかったジャックの正体の検証とは」や「まとめ」を読んでください。大筋がだいたいわかります。

 

 

切り裂きジャックの正体は七億費やしてでも知る価値!?女作家コーンウェルの執念

決定版 切り裂きジャック (ちくま文庫)

決定版 切り裂きジャック (ちくま文庫)

 

この切り裂きジャックは古今問わずさまざまな作品のモチーフになっており、最近ではパトリシア・コーンウェルが「切り裂きジャック」「切り裂きジャックを追いかけて」

↓kindleのみで発行されている。2015年刊行。彼女のジャックものでは最新の本。

 

の二冊を著すなど、彼女のように熱心に彼の正体を追いかけている人物のことを「リッパロロジスト」と呼ぶのだという。

パトリシア・コーンウェルは真相究明のために7億円を使うなど、熱心なリッパロロジストとして有名である。

 

まあ「検視官ケイ・スカーペッタシリーズ」が爆売れしてる超有名作家さんなので、7億はコーンウェルさんにはダメージではないでしょう・・・

 

こちらは2005年に刊行された「真相」彼女は切り裂きジャック関連で4冊も本を出しています。

上記の「怖い絵」展でも触れられていますが、このパトリシア・コーンウェルの唱えた説が画家シッカート。絵のタイトルは「切り裂きジャックの寝室」

 

シッカートはなぜ「切り裂きジャック」だと疑われたのか

では、なぜシッカートは切り裂きジャック真犯人のなかに名を並べることになったのだろうか。

wikipediaによると

1907年9月11日、カムデン・タウンでエミリー・ディモック(英:Emily Dimmock)という女性が彼女のアパートで殺害される事件が発生する。犯人は眠っている彼女の喉を切り裂くという残忍な手口で彼女を殺害した。この事件は「カムデン・タウン殺人事件」としてセンセーショナルに扱われることになる。

シッカートは数年前より裸婦が鉄のベッドに横臥している題材を多く絵画にしていたが、1908年にシッカートが発表した「カムデン・タウンの殺人」は、裸の婦人が横臥したベッドの横に男性が座り、絶望したようにうつむく姿が描写され、この事件を彷彿とさせ、論争の的になった。

Wikipedia:切り裂きジャック より引用

この絵が「切り裂きジャックの寝室」暗く、暗鬱な空気が絵から漂ってきます。

私はパトリシア・コーンウェルの一連の本を読んでいないのでそういう視点で意見を言うと、芸術家にとって「エロスとタナトス」って重要なテーマじゃないですか。

上記の「レディ・ジェーン・グレイの処刑」にしたって、実際にあった歴史的事件をモチーフにしてる、というか、今しも処刑されようとしているうら若い女性の一瞬を切り取ったものすごく「死の匂い」が漂う絵であるともいえる。

もちろんそれ以外のモチーフで絵を描く人もいますが、この「実際に起きたカムデン・タウンの殺人事件」がシッカートの興味を喚起し、絵のモチーフになった可能性は大きいでしょう。

作家でも音楽家でもこれは往々にしてあることであり、それを言うならば7億円も使って未解決犯人探しをし、関連書籍を4冊も書いちゃったパトリシア・コーンウェルのほうが病膏肓に入ってるともいえる。というか、私はこっちのほうが実は病が重いと思う。

シッカートさんはそういう観点では私は犯人でないように思えてしまう。たかだか事件をモチーフにした絵画を一枚描いただけですよね!?これをね、モチーフを変えてダリみたいに何枚も何枚も何枚も!書いてたらいかれてやがる・・・となりますけど(注:私はダリ好きです)

 

現代で言うなら、先鋭的アーティストが実際に起きた事件をモチーフに絵を描いて、それがあまりにも鬼気迫るものであったために「この絵はなんだ!?犯人じゃないか、怪しい!」ってなったように見えて、それは彼が実際に犯罪に手を染めたわけでもなんでもなく、ただ彼があまりにも「現実の犯人の気持ち」を理解しているように見えた絵を描いた、ということの裏返しのようにも思えるのです。

そういった意味では彼はきっと一流の芸術家なだけであって、恐らく犯人ではない。ただ「犯人の感情を己に憑依させ、それを絵にして描き出して見せる」という、いわばイタコ型のアーティストだったのだと思う。

7億使うまでもなく「シロ」に思えてしまいますよ。というか、もし彼がジャックに非常に関心を持っていたとしても、これを一枚の鑑賞に値する絵として立派に昇華している以上、やはりこの絵で彼の興味は完結していると考えたほうが良いと思うのです。

もちろん、彼のこのことに対する異常な執着を示すデッサンが山ほど見つかったり、未発見のメモや日記が発見されたのならば相当怪しいですが、絵を一枚描くのにどれだけそのモチーフのことを考えつくすのか、と考えれば、やはりそれでも「犯人」と呼ぶに足る証拠とは言えないでしょうね。

↑ていうか、普通にこういう明るい絵も描ける人なのなら、ますます怪しくない・・・気がしませんか!?

 

今回見つかった「ジャックの正体」の検証とは

 

 

要は、上記のツイートによると、同じ証拠品に対する検証が2007年~2014年間に行われ、その経緯が2015年に刊行されたこの本で紹介されたようだ。

切り裂きジャック 127年目の真実

科学的見地からジャックの正体を追求しようというこの書籍で紹介されているDNA鑑定にいささかの疑問の余地が生じたため、それを改めて検証しなおし、その結果を論文として別の法医学者が発表した、という経緯らしい。

つまり、2015年時点、上記の書籍でわかっている科学的証拠がさらに検証しなおされたということである。

この結果、はじき出されたのが近所に住んでいた理髪師「アーロン・コスミンスキー」である。

 

英インディペンデント紙の報道では、捜査を担当した科学者が、数の数え間違いなどを含むいくつものミスを犯していたとのことです。

DNAは被害者の1人が持っていたショールから得られたもので、それによると23歳のポーランド人の床屋アーロン・コスミンスキーが切り裂きジャックであったのではないかと、容疑者の1人として疑惑がもたれました。

ショールを保有していたビジネスマンRussell Edwardsさんと、科学捜査官ルーヘレイネンは、コスミンスキーの子孫の1人に、とてもレアなDNA形状を発見したことから、彼を犯人に仕立て上げたようです。

ギズモード「切り裂きジャックの正体解明はまだ早かった」 より引用

 

本件においてDNA鑑定が行われたのは実は三回目である。一回目は件の「パトリシア・コーンウェル」の依頼のもと行った、犯人を名乗る男の手紙の鑑定(これで先の画家、シッカートが名指しされた訳だが、状況証拠だという話も多い)

次いで上記で述べた2007年~2014年の間のリヴァプール・ジョン・ムーア大学の科学者ヤーリィ・ルーヘレイネンによる鑑定。次いで、今回の論文発表に至った三回目の鑑定である。

二回目の鑑定にはじつは上記に紹介したように数の誤りなどの初歩的な誤りがあり、そのさい犯人とされた「アーロン・コスミンスキー」の結果に疑問が生じてしまった。

その結果、再度鑑定をし直し、今回DNA鑑定でコスミンスキーが再浮上したわけだ。

また、ざっくり言って皆DNA鑑定DNA鑑定と口にするが、今回のものは一致したとされるのは「核DNA」ではなく「ミトコンドリアDNA」であり人物の特定には使えない、つまりこれもまた確証には至らないのでは!?という話も出ている。

一つの細胞の中に一つしかない「核DNA」と異なり、一つの細胞の中に数百〜1千数百個あるDNA

古くて微量の鑑定資料からも検出可能だが、母系で遺伝するため、母方の親族間では完全に一致する。また、人の移動が少ない地域では同じ型のミトコンドリアDNAを持っている人が少なくない

このため、ほぼ1人ずつ型が異なる核DNAと違い、型が一致したとしても同一人物と断定できず、個人識別方法としては補助的に利用されることが多い。

コトバンク「ミトコンドリアDNA」より引用

 

つまり「切り裂きジャックの正体」は核DNAが一致しない限り、犯人を「アーロン・コスミンスキー」だとは断言できないということ。

だから「切り裂きジャックの正体が判明」というのは正確なワードではなく「切り裂きジャックの正体が、これから分かるかもしれない」というニュアンスが正しいといえる。

コスミンスキーが犯人だとはまだ断言できません!!以上。

 

まとめ

「検視官」シリーズの作者パトリシア・コーンウェルは熱烈なリッパロロジスト

七億円掛けDNA鑑定を行い四冊の本刊行。この結果「画家 シッカート説」が定説に

その後2007年~2014年間に二度目の鑑定。理髪師アーロン・コミンスキーが浮上

二度目の鑑定にミスがあったことから三度目の鑑定が行われ、コミンスキーが再浮上

「ミトコンドリアDNA」が一致しただけ。個人特定の「核DNA」の一致ではない

つまりまだ「切り裂きジャック」の犯人は分かってない

 

今記事で紹介した参考書籍

 

パトリシア・コーンウェル「ジャック関係」書籍。刊行順。

↑この本だけキンドルオンリー。2015年刊行。

 

科学的見地における「二回目鑑定」を辿った書籍

 

 

切り裂きジャックをモチーフにした作品

映画 ジョニー・デップ&ヘザー・グラハム出演の「フロム・ヘル」

小説 切り裂きジャック・100年の孤独

ドラマ「クリミナル・マインド」ニューオーリンズの切り裂きジャック

 


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