ロシアの怪奇事件「ディアトロフ峠事件」を取り上げた本「死に山」を読む

どうも、不思議なこと、変なことにいつも興味があるブログ主です。アマゾンでそういった書籍を検索していたとき出てきたのがこの「死に山」でした。

 

死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相
死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相

すごいタイトルですね。元々この「ディアトロフ峠事件」は哲学ニュースさんで見た記憶があるのですが、あまりにも怪奇で、かつミステリアスなので非常に記憶に残っていた事件です。

↓こちらの記事でもトップに上がるぐらいだから割と知名度は高いと思う。主にネットで広まった部分が大きい事件だと思う

 

(本題に入るまで前置きが長いので、この章は事件概要を知りたい方は飛ばしてもらってかまいません)

でも、あまりにもその事件の内実が怪奇なので「これは宇宙人説とか国家の陰謀説で終わるんだろうなあ」という印象で終わり「おそらくずっと解決しないままだろう」と思っていました。

ところがこの「死に山」は小説ではなくれっきとしたノンフィクションで、著者のジョニー・アイカー氏はアメリカでドラマや映画の製作に携わっているクリエイター。

しかも「ディアトロフ峠事件」を調べるに当たり、なるべく彼らと同じ経路をたどることによって事件の真相を徹底追求しようと努めている。

ロシア人たちは口々に「アメリカ人のあなたが、なぜロシアの学生たちが遭難した事件など調べにくるのだ」と時に率直に、時には「お金目的ですか!?」などとアイカー氏に疑問を投げかける。

それはそうである。何せ、これほど世界で興味を持たれている怪奇事件であるにも関わらず、誰一人として直接この「死の山」を訪れようとしたことはないのだから。

アイカー氏は「ノンフィクションを書くならば現地で関係者に話を聞き、できれば事件現場に出向き、追体験をする」という全うな姿勢を貫いているだけなのに。

しかし事件の現場はロシアのウラル山脈の奥深く、最新のスノーモービルでさえ苦心する豪雪山岳地帯だ。

 

写真引用元:死ぬまでに行きたい!世界の絶景「ウラル山脈の最北端」 より

 

簡単に行ける土地ではないし、ここまでやったアイカー氏のルポは「山岳もの」としても非常に貴重だし、また事件の真相に最も肉薄した人物である彼が書いたノンフィクションを、安全な場所で危険なく読み、追体験できるという意味では、巷にそうそうない書籍といっていい。

 

恐怖の山岳事故「ディアトロフ事件」とはどんな事件なのか

 

ディアトロフ峠事件(ディアトロフとうげじけん)とは、1959年2月2日の夜、当時のソ連領ウラル山脈北部でスノートレッキングをしていた男女9人が不可解な死を遂げたことで知られる事件である。

事件は、ホラート・シャフイル山(マンシ語で「死の山」の意)の東斜面で起こった。

当時の調査では、一行は摂氏マイナス30度の極寒の中、テントを内側から引き裂いて裸足で外に飛び出したとされた。遺体には争った形跡はなかったが、2体に頭蓋骨骨折が見られ、別の2体は肋骨を損傷、1体は舌を失っていた。

さらに何人かの犠牲者の衣服から、高い線量の放射能が検出された。

事件は人里から隔絶した山奥で発生し、生還者も存在しないため未だに全容が解明されず、不明な点が残されている。当時のソ連の捜査当局は “抗いがたい自然の力” によって9人が死に至ったとし、事件後3年間にわたって、スキー客や探検家などが事件の発生した地域へ立ち入ることを禁じた。

引用元:wikipedia「ディアトロフ峠事件」より

 

嘘の事件ではなく、実際にあった事件です。

関連画像

1959年、2月26日に捜索隊に発見されたテント。写真引用元wikipedia

 

この事件の不気味なところ①「登山者の不可解な行動」

まずこの事件の不気味なところは、マイナス30度の雪山にメンバーのほとんどは裸足、または靴下で飛び出していること。

彼らはほとんどのメンバーがウラル工科大学の学生で、今でいう「トレッキングサークル」に属していた。とはいってもお遊びの気軽なものではなく、ある程度のハードルを超えれば「トレッキング第3級」の資格も取れるという本格的な旅になるはずのものだった。

現在と違ってこの事件当時は59年前なので最新の防寒具も防寒着もない。しかし彼らは当時揃えられる恐らく最新の道具を装備した人々であった。

つまり山の恐ろしさは誰よりも知っており、裸足でマイナス30度の夜外に飛び出したらどうなるか、という知識がないはずがないのだ。

それなのに、そんな彼らがこんな最期を迎えてしまったのだ。

 

この事件の不気味なところ②「彼らは誰かに襲撃された?」

 

前章で上げたようなことが起きたとするならばまず考えられるのが

熊に襲われた

何者かに襲撃された

あたりではないだろうか。当初テントは外側から切り裂かれたと考えられていたが、切り口を調査した結果

ナイフで

内側から

三回に渡って

切りつけられていたということが分かった。これは明らかに何らかの彼ら全員が錯乱する出来事が起きたため、半狂乱でテントから逃げた、という結論にしかならない。

「クマに襲われた」説は現場にはクマの形跡などなく、9人の足跡しか見付からなかった。

調査隊がテントを見つけたときにはテントの中の物品も特に消えたものはなかったらしい(この証言は途中離脱したメンバーの一人が証言している)のでそもそもが考えられない。

「何者かに襲撃された」説は「宇宙人」「政府の秘密機関・武装集団」「地元民族 マンシ族」などが考えられており、そもそもの「宇宙人」は初めから可能性から削除する。

また、地元の民族「マンシ族」は温厚な人々で、彼らの捜索にも積極的に協力していることから、そもそもそういうことをする人々ではない、というのも大前提だ。と残るは「政府の秘密機関・武装集団」となる(少し離れた場所に囚人収容キャンプがあったための仮説らしい)が、これは非常に考えにくい。

そもそも、現場の状況をこの「死に山」で読んでいればあっさりわかる。オトルテン山の標高は1,234 m。参考までに日本の山と比較すると富士山の標高は3776メートルだ。

「な~んだ、富士山より全然低いじゃん」と思いがちだが、そんな甘いものではない。何しろ冬山で、ロシアの豪雪山岳地帯を縦断するルートである。どちらかというと「八甲田山行軍事件」のほうが近い(八甲田山は標高1,584m)

そんなところに潜んで人を襲う政府関係者なんているかよ

ってこれロシアの人とかも言ってるらしいから現実見ろよ・・・となりますよ。日本人だったら八甲田山で登山チームがビバークしてたら、そこにやってきた軍関係者とか武装した脱獄囚に襲撃されたって言ってるようなもんですよ・・・Xファイルですか・・・やるほうも死んでまうわ・・・

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この事件の不気味なところ③「服から放射能が検出」

やはり「宇宙人」だの「秘密機関」だのという話が出る要因として大きいのは「放射能」と「うち一人の舌がなかった」ということでしょう。

著者はシカゴ大学医療センター放射線科のストラウス氏にこの「遭難者たちの衣類から検出された放射能のデータ」を提示し、意見を求める。

「放射線濃度に関する、今日の科学的見地によれば、彼らの衣服に関して事件簿に上がっているベータ粒子の数は、まったく異常なものではない

「50倍から100倍の放射線が検出されなければ、危険とか異常に高いレベルとは言えない

ストラウス氏の見解をもとに著者がたどり着いた推論はこうだ。

彼らのいた場所から、1400メートル程離れたノバリャ・ゼムリャ諸島でその冬、核実験が行われており、その放射線が大気や水の循環によって(つまり雪などに含有されて)ウラル山脈北部に達することも十分考えられる、と。

つまり彼らは「Xファイル」でいう「政府の怪しい秘密実験」で放射能を浴びたわけでもないし、宇宙人に浚われそうになって慌てて逃げたわけでもないということで、当時はバラバラの場所で起きた出来事が統合されずにいたものが、現代ではこうして科学的見地から仮説を立てることができるのである。

 

この事件の不気味なところ④「被害者の舌がない」

遭難者9名のうち、舌がなかったのは女性一名のみ。こういうので「拷問」だとか「襲撃」説が出てしまうんでしょうね・・・しかし著者はここでも躊躇しない。

何しろ遺体は数週間雪の中に埋もれていたのだ。水中の微生物によって、一番柔らかい部分が分解されたと思うのが妥当

だと結論付ける。かつてよく宇宙人関係で取り上げられていた、目や内臓がない牛の話「キャトルミューティレーション」を思い出す部分があります。

 

1970年代のアメリカで、家畜の目などが切り取られて死亡しているという報告が多発。死体にレーザーを使ったような鋭利な切断面があること、血液がすべて抜き取られていることなどの異常性から人間の仕業ではなく、宇宙人によるものではないかと騒がれた。

1980年に元FBI捜査官ケネス・M・ロメル・ジュニアが1年にわたって行なった実験で、死亡した家畜を放置しておくと、血液は、地面に吸い込まれて流れ去り、蠅や蛆などの虫や動物などに目などのやわらかい部分から食べられ、牙や嘴による鋭利な切り口は、キャトルミューティレーションと同じ状態になるとの報告を行った。

また、キャトルミューティレーションにあったという牛の死骸の損なわれた部分は、すべて上部のみだった。つまり「キャトルミューティレーションとは、牛の死骸の通常の変化でしかない」との見解を示した。

引用元:wikipedia「グレイ」の項「キャトルミューティレーション」より

つまりこの「ディアトロフ峠事件」の不気味さも、自然の循環の一部だと仮定ができるわけだ。

しかし「なぜ彼らが皆テントから飛び出したのか」「被害者の二人の肋骨の損傷、骨折の跡の説明」について納得のいく理由を調査するため著者は東奔西走する。

果たして「ディアトロフ峠事件」の真相とは!?「わからない」と曖昧に終わらせるのではなく、その困難な二つの謎から著者は決して逃げずに書き進めていき、そうしてついに著者なりの「結論」に辿り着く。

 

まとめ

ここまで「死に山」で出た調査結果を引きながら書いてきたが、この事件には更なる核心部分があり、そこを書くとこの本の楽しさを損ないかねないのでそのあたりは載せない。

中でも、彼が構築した過程に基づいた「事件前日から当日、いったい何が起きたのか」という再現ドラマが非常に興味深い。

この本はまず「ディアトロフ峠事件」で被害にあった9名の若者たちを、顔もわからぬ「遭難した9名の若者」として片づけず、個性も特技も、夢も希望もそれぞれに持っていた若者たちとして一人ひとりきちんと描写していく。

また「トレッキング三級」を取るための必須事項として彼らは絶えずカメラで記録を残す必要があった。本の中には楽し気に友達同士で戯れるそんな若者たちの顔が幾枚も載せてある。

つまり私たちは「あらかじめどうなるか結果が分かっている」倒叙ミステリーを読む形になる。

本文は「彼らの辿った日々(1959年)」「著者が辿った彼らのルート(2012年)」「捜索隊が彼らを見つけるまで(事件後の時系列)」の三本から成り立っている。

読み進めていくにつれ、徐々に重苦しさが迫ってくる。しかしとても恐ろしいのに読むことを止められない。

本としては高い部類に入るこの「死に山」であるが、週末など、読書に十分使える時間があれば、間違いなく「買い」の本だとお勧めしたい。正直私もかなり「高いなあ」「面白くなかったらどうしよう・・・高いからなあ・・・」という気持ちでアマゾンのレビューなどを見ながら恐る恐る購入したのだが、購入したのは正しかったと思う。

特に、この事件に興味がある人ならば買って損はない。荒唐無稽な「UMA説」や「怪奇現象説」に逃げず、真摯に科学的な視点で解釈しようとする視点に好感が持てた。

 

 

 


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