映画好きのフォロワーさんから最近「カメラを止めるな!」という映画についてちらほらツイートが流れてきてはいました。
特に映画に詳しい訳でもなく、フォロー数が多い訳でもない自分のアカウントにまで流れてくるということは、この映画の口コミが非常に多く、またぜひ「人に薦めたい」と思う人が多いことの現れなのだと思います。
究極の低予算映画『カメラを止めるな!』 口コミ広がり、ついに全国40館以上で上映へ https://t.co/WdgrS18ViR
— ハック (@52779Dannyboyle) July 25, 2018
この映画は特に有名な俳優さんも使っておらず、低予算(300万円)で作られたものなのだそうですが、6月の公開当初は二館で上映されていたものの、SNSなどで口コミに火が付き、全国190館公開に化けた映画なのだそうで、これほどヒットしたのは単純に脚本と世界観が面白いからなんでしょうね。
☟監督の上田慎一郎さんのツイート
「カメラを止めるな!」
色んなメディアで『低予算でも無名でもヒット作作れんじゃん!』って言われてるけどカメ止めは『低予算だから、無名の監督と俳優だから』できた映画です。≪無知×無名×無謀=無敵≫を生かして繰り出した一回限りの大技です。次は次で違う戦い方を探すのだ!!— 上田慎一郎 (@shin0407) August 18, 2018
ところがこの映画大ヒットを受けて、自分が「原作者」です、「いや、この映画はオリジナル作品です」という制作側と原案者の著作権騒動が起きています。
双方の言い分を聞きながら「作品は一体誰のものなのか」ということを考えていきたいと思います。
(ソース:2018年8月22日「グッドモーニング」内ストライクニュースまとめ、同日放映めざましテレビ より)

まずことの経緯を整理すると
「カメラを止めるな!」に「自分が原作」と主張する人物が現れました。
脚本・演出家の「和田亮一氏」です。
和田さんは現在は解散した劇団「PEACE」で2011年に公開した「GHOST IN THE BOX!」の設定がこの映画に酷似しているとマスコミのインタビューに答えました。
「映画の評判は、僕も周囲から聞いていました。そんなとき、過去に僕が主宰していた劇団の後輩から『あれ、先輩の作品が原作ですよ。知らなかったんですか?』と言われて、初めてその映画が、僕の演出した舞台『GHOST IN THE BOX!』(以下『GHOST』)をもとに作られたことを知ったんです」
「GHOST IN THE BOX!」の舞台は廃墟、サスペンス映画を撮影中のスタッフが次々に襲われる、というコメディ調のお芝居です。
一方「カメラを止めるな!」は廃墟内で映画を撮影中のスタッフがゾンビに襲われながらも、撮影を辞めない、というホラー風味のコメディ映画です。
他にも「廃墟で旧日本軍が人体実験」という設定と「トラブルを役者がアドリブで回避」というシチュエーションも共通、「サスペンス映画」「ゾンビ映画」の違いこそあれ、コンセプトは非常に近いものがあることは確かです。
また、上田氏によると映画中の印象的なセリフ「カメラは止めない!」というセリフも「GHOST IN THE BOX!」中にあるそうです。また、非常に重要なオチの部分も同じです。
「構成は完全に自分の作品だと感じました。この映画で特に称賛されているのは、構成の部分。前半で劇中劇を見せて、後半でその舞台裏を見せて回収する、という構成は僕の舞台とまったく一緒。
引用元:同上
「カメラを止めるな!」の脚本が立ち上がるまでの非常に重要な時系列
「GHOST IN THE BOX!」は、和田氏がプロットを考案し、劇団のA氏とともに演劇の脚本として完成させたものだ。(舞台上演時は脚本がA氏、演出が和田氏)
「GHOST IN THE BOX!」は初演で好評だったため、2013年に再演された。その際「カメラを止めるな!」監督上田慎一郎氏も見に来ていた。
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2014年、和田氏の劇団「PEACE」が解散
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2015年、上田監督が「PEACE」の元劇団員のB氏と接触し、『GHOST』の映画化を企画。上田監督はA氏に映画用の脚本執筆を依頼したが、このプロジェクトは頓挫したため、脚本は宙に浮いた形。
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2016年、上田監督『カメラを止めるな!』のプロデューサーの市橋浩治氏から長編映画の製作の話を持ちかけられる。上田監督はなぜか(脚本も演出もしていない)B氏に「GHOST IN THE BOX!」の映画版をやりたいと伝える。A氏にも和田氏にも連絡なし。
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上田監督、2015年に頓挫した際、宙に浮いた形のAの脚本を大幅に書き直す。
2018年、映画公開。エンディングクレジットにA氏とB氏の名前あり。原作表記や劇団名、和田氏の名前、参考にした「GHOST IN THE BOX!」の表記もなし。
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両者話し合いの結果「原案」として8月3日より劇団・作品名を、和田氏の名前(スペシャルサンクス)として表記
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和田氏「原案」ではなくて「原作」表記をしてほしいと主張(現在)
「上田監督からは事後報告の形で『名前を入れました』と連絡がありました。しかし、脚本を書き直して映画化する過程で、許諾を取る類いの連絡はありませんでした。公開されたいま思うと、原作として和田さんと私のクレジットがないのは疑問に思います」
現在の双方の言い分
「カメラを止めるな!」制作側
「弊社といたしまして、本映画において舞台(『GHOST』)に対する著作権侵害がなされている認識はございません。また、本映画のクレジット表記方法をはじめ、本映画の製作、上映にあたり、確認・協議すべき事項についても舞台の関係者の方々と都度協議をし、ご納得いただいております。
また、そのほかの条件や今後の対応に関する協議についても、現在、舞台の関係者の方々と進めさせていただいております」(書面にて)
引用元:同上
上田慎一郎監督のコメント☟
『カメラを止めるな!』は劇団PEACEの舞台「GHOST IN THE BOX!」から着想を得たものです。ただ僕としてはその後自らが脚本・監督・編集して作ったオリジナル作品だと思っています。和田さんや劇団の方の主張にもしっかり耳を傾け、お互い円満な解決が出来ればと思っています。よろしくお願いします!
— 上田慎一郎 (@shin0407) August 21, 2018
原作主張側 和田氏の主張
「(映画を見たときは)すごく嬉しくて、ツイッターとかフェイスブックを見て嬉しかった旨を投稿したんですけど、エンドロールで劇団の名前が入ってなくて」
「僕は原作という形で載せてほしかったんですね」
「監督の考えとしては、最終的に別物に上がってますので、原作とは入れられません、と。」
「最終的にいくら別物になったといっても、どうしても類似点が多く見えてしまうので、原作と入れて頂きたい」
「僕が不満に思っているのはお金のことじゃなくて権利、なぜ自分の許可がいらなくなってしまうんだろうと(不満に思う)」
ソース:2018年8月22日放映「めざましテレビ」・「とくダネ!」内インタビューより
怒りの告発とありますが、決して怒っているわけではありません。
こうなる前になんとかする方法もあったのでは無いかとも思っています。
だけど、僕が声を上げることで、同じようにもやもやしている人たちにも届けばいいと思っています。— ワダリョウイチ (@Rookey_rw) August 21, 2018
和田氏のこの件についてのコメント(note 注:無料公開です)
まとめ
『カメラを止めるな!』の著作権問題は、映画制作側が原案止まりといいつつクレジットしてることと(ただのアイデアなら本来不要)、劇団の元主催者の人が当初は映像化を喜ぶツイートをしていたことで、双方がそれぞれ当初どんな認識だったのかがややこしく感はあるかもね・・
— てんたま (@tentama_go) August 22, 2018
「パクリ」「パクリ」とワイドショーなどは連呼しています。「パクリ」というのは少し乱暴な言い方に感じます。
監督の上田氏はこの脚本を大幅に書き直し、人物設定やセリフなどすべてが完全一致している訳ではありませんので「パクリ」というのは少し違うかなあと。「着想を得た」という言葉に当たるのかなと思います。
この件がこんなに揉めているのは、きちんと着想を借りるなら借りるでA氏と和田氏に事後報告ではなくて、事前に許可をとっておくべきだった。
劇団が立ち消えになって、A氏が執筆した脚本が宙に浮いたからといって、フリー素材になった訳ではないと思うんですよ。
あと「スペシャルサンクス」というのは以前から思っていましたが意味がわからない表現の仕方です。
「何に」サンクスなのか分かりづらいし「GHOST IN THE BOX!」とA氏と和田氏がいなければ「カメラを止めるな!」という映画も生まれてなかったのだと思うので、もうちょっと初めに入れたクレジット文字も考えるべきではなかったのかな、と思います。
だから和田氏はこの制作側が苦肉の策で入れた「スペシャルサンクス」にカチンと来たのかなとなんとなく思わないでもないです。
あとこの件に大きく関わっているはずのA氏のコメントがないのが気になります。A氏がどう考えているのかも知りたいですね。
「カメラは止めるな」問題。舞台の方が原作だとすれば、著作権が派生する。原案だとお金を払う必要はまずない。一旦そこで落ち着いたものの、思いのほか、映画が大ヒットしてしまった。儲かると人の感情は色んなことになる。いずれにしても、カメラは止めるな!訴訟は止めろ!というところでしょうか。
— 越前屋俵太 (@echizenya_hyota) August 26, 2018
著作権の問題に発展していますが、一番の問題は「感情の問題」なような気がしますので体験をもとに書いてみました。
パクリ疑惑騒動の『カメラを止めるな!』をいまさら観に行ってみて思う事|久田将義 https://t.co/N08eVkyUxf
— 久田将義 (@masayoshih) August 24, 2018
追記
2019年時点、著作権問題は収束に向かった模様である。
舞台公演のDVDが発売中止になったりと、よくわからない動きをしていたこの件ですが、円満解決何よりであります。 / “「カメラを止めるな!」に関するご連絡” https://t.co/kmJx5cKEeq #映画 #著作権
— 窓の外 (@madosoto) February 27, 2019
「カメラを止めるな!」公式サイトによる著作権問題へのコメント(2019年2月27日)