衝撃の問題回「半分、青い」78話にみる「仕事を選んだ女の辛苦」


NHK連続テレビ小説「半分、青い。」オリジナル・サウンドトラック
NHK連続テレビ小説「半分、青い。」オリジナル・サウンドトラック

「半分、青い」の問題回(6月30日土曜日放映回)鈴愛の選択が現代の働く女性あるあるで本当になんというか「あんた本当にバカだね」だとか「さっさと漫画辞めてればよかったじゃん、結婚したって漫画は描けるじゃん」なんて多分言いたくなった人も多いと思う。

それは正しいし間違いじゃない。でも鈴愛の選択も間違いじゃない。

 

「仕事が楽しい」そんな時期はつい「恋や愛」を後回しにしてしまう

仕事には「今最高に油が乗ってる」と感じる時期がある。これは第一結婚フィーバー(大学卒業してすぐ、または就職後数年で結婚する)を「まだ早すぎる」と見過ごしたあとでやってくる仕事の醍醐味だ。

まさに「半分、青い」で鈴愛が律に「ごめん、無理」と言った時期はこれに当たる。「自分にはなにかができるかもしれない」「何事かを成し遂げられるかもしれない」と実際の手ごたえを感じつつ、自分の力をとことん試してみたい、そんな野心に溢れた時期と言える。

だからそんなとき「恋も仕事も」なんて器用な両立はできない。

「恋」や「愛」に振り分ける時間や手間を「仕事で自分の力を試す」ことにすべて注ぎ込んでいるからだ。物理的なリソースがないのである。

没頭しすぎて寝不足になるかもしれない。休日なんて潰れるかもしれない。でも若いから体力もなんとかなってしまうし、肉体的に多少の無理が利く。これが鈴愛がいま陥った「三十前クライシス」に陥った28歳ぐらいの「仕事命のビジネス女」の現実である。

「私には仕事しかない」女の子はいつも崖っぷち

つまり、仕事も煮詰まって「もう私はここまでか・・・」とどん詰まりの袋小路にはまったとき、精神的な拠り所(彼氏)物理的な崖っぷちの別ルート(結婚)がある人間と「もう崖っぷちにたどり着いたら物理的にどんづまりで落ちるだけ」の人間とでは「仕事をしてるオンナ」でも厳密には同じ括りとは言えない。

今回すずめが道を同じくする同僚に「逃げたやつに何がわかる!」と言ったのはこういうことではないのだろうか。

言葉としては酷いもの言いだし、さすがにそれを相手にぶつけるのは間違っている。

仮にも自分自身で「恋も女の幸せも捨てる、いやそれを考えてたら私は仕事に燃えられないからしばらく恋は後回し」という選択をした訳だから。

また「逃げたやつになにがわかる」という言葉の鋭さに意識が向いてしまい「鈴愛を嫌いになりそう」だとか「性格悪い」だのという言葉のみを捉えた印象で思われているのは非常に残念に思う。

 

愚直で不器用な「仕事に生きる女」だって迷うときもある

このとき仕事を「恋と両立」できている女性たちはあくまでも「結婚」や「彼氏」を保険として残している。彼女たちは前述の「仕事にすべてのリソースを割く」女たちに比べ、決して劣る訳でもないし、仕事をさぼっている訳ではない。

しかし彼女たちにないものはただ一つ「私にはこれしかないんです。これがなくなったら私は何もないんです」という今回鈴愛が吐き出した「愚直さ」や「不器用さ」の入り混じった危うさである。

だから秋風先生もスタジオの皆も何も言うことができなかったのである。すずめが漫画のために何を諦め、何を選択してきたのか。それを知っている人間は、軽々しく「じゃあ律を離さなきゃよかったでしょうよ、だからどこの馬の骨ともしらないしたたか女にさらわれたんでしょうよ!あんたが悪いんだよ!」なんて言えるはずもないのである。

彼らだって漫画を描くためにたくさんのことを選択し、また捨ててきた筈である。だから彼女の気持ちがわかりすぎてしまうのだ。

だからあの秋風先生ですら、そんな鈴愛の全身全てで傷つき、漫画の糧にしようとした愚直さ(ある意味で痛々しい不器用さ)に何も言うことができなかったのだ。

 

ついにブチ切れ「いい子ちゃん像」をぶち壊した鈴愛。そんな姿がいとおしい

鈴愛はそんな彼らの心遣いを「気を使ってる」と解釈し、心情をまるでバケツをぶちまけたように吐露する。

最終的には「耳が片耳聞こえない」ということにまで言及したことにより、鈴愛が明るく振舞いながらもそれを気にし続けて来たことが明らかになる。

今までは律がいたから、それを気にしないでいられた。でももう律は違う女性を選んでしまった。もう笛を吹いたところで律は来ない。自分の失ったものの大きさに今さらながらに気が付いてしまったのだ。

この鈴愛のスタジオの皆に対する感情の吐露は視聴者の中でも反感を持つ人も多い。しかし、ある意味今日鈴愛は「NHK朝ドラヒロイン」の持つ特性

 

いつも明るく元気でけなげ

人の悪口を言わない

意地悪をしない

人に八つ当たりをしない

いつも前向きでニコニコしている

 

という像をぶちこわし

人に嫉妬する

やさぐれる

幸せな人に八つ当たりする

自分のことを思ってくれる人みなに牙をむく

 

という「こんなやつ現実にいねえだろう」と思うほどハイスペックな「NHK的いい子ちゃんヒロイン」から脱皮してみせ「実にリアルな、何もかも無くしてテンパった女のリアル」を提示してみせ、朝から善良な老若男女の度肝を抜いた。

また、鈴愛が今回壊したのは「典型的いい子ちゃんヒロイン像」だけでなく、自分自身の「何事にも明るく前向き、障害だって気にしない!明るく元気な鈴愛ちゃん」でもある。

だから私は今回の鈴愛の「心情吐露」を性格悪い、とも思わないし嫌いにもならない。彼女がある意味自分の殻を破ったことを好ましいと思う。

 


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