彼が国際線の機内に乗り込んだ途端に乗客たちは嘔吐、失神するほどの悪臭に見舞われた。
現実とは思えない出来事であるがこれは紛れもない事実だった。男性はロシアの有名バンドC-Majorのギタリストのアンドレイ・スチリン。
目次
人の体を溶かしてしまう恐怖のウィルス「ニパウィルス」とは
彼が侵されていた病は致死率75%ワクチン未開発の病「ニパウィルス」であった。
二パウィルスが発見されたのは1997年のマレーシア北部の町で、養豚場で就労していた人たちの中で急性脳炎を示す人たちが現れ、260名の感染者のうち100名余が死亡した。この土地は日本脳炎の常在地であったことから、当時この流行は日本脳炎によるものと考えられていた。
翌年同じ州でやはり養豚場で就労している労働者のなかに脳炎を発症する者が現れた。病は99年にも拡大の兆しをしめし、発症した人間は半数が死亡するなど深刻な被害を出した。
当初は日本脳炎によって引き起こされたものと考えられていたため、蚊の駆除やワクチンの接種などの対策が取られたが、感染者がほぼ成人の男性であったこと、また、養豚場での就労者であったことから、同ウィルスに感染した豚の分泌物や尿などから接触をもったことが感染経路と考えられている。
主な症状は急激な発熱・頭痛・めまい、嘔吐など非常に急性脳炎の症状に酷似しており、患者のうち55%に意識障害が現れた。
回復した患者は55%、致死率32%、後遺症を残した者は14%と、極めて予後の悪い疾患といえる。
2004年バングラデシュにおいてニパウィルスによるアウトブレイクが確認されている。マレーシアのものより致死率が60~74パーセントと上がっており、こちらの感染経路はニパウィルスに感染したコウモリによってもたらされたものと考えられている。
また、2018年インドにおいてニパウィルスの集団感染が報告されており、すでに10名余が死亡している
予防・治療方法
ワクチンなどによる予防法はない。
治療においてはリバビリンが効果があったとして報告がある。
ニパウィルスの示す症状
・中枢神経系における血管炎と内皮細胞の障害
・血管壁の壊死
・呼吸困難
・気道分泌物の増加
・痙攣などの神経症状
感染について 人から人へは移るのか
ニパウィルスの自然宿主はコウモリと考えられており、養豚が盛んになるにつれ、マレーシアでは未開のジャングルを切り開くなどしたことによって豚がこれらのウィルスと接触し、感染した豚を通じて人間に感染したものと考えられている。
また、さきほどのマレーシアの感染ではコウモリから人への感染、また1994年のオーストラリアの事例では競走馬からの人への感染が確認されている。
いずれも感染動物を介して人間に感染したものと思われるが、人から人への感染も生じている可能性もある。
今回の飛行機の件ではオランダの格安航空会社「トランサヴィア」は同機に乗り合わせた乗客、また患者と接触した乗務員ともに「感染のリスクはない」と発表している。
なぜここまで重症になってしまったのか
アンドレイはスペイン領カナリア諸島にあるグランカナリア島で医師に罹ったが「たんなる感染症」と診断され、抗生物質を渡されたのみだったようだ。
ニパウィルスの持つ初期症状は発熱・頭痛・めまい、嘔吐などであることからそう診断され、薬を飲めば回復する程度だと考えたのだろう。
このウィルスの示す症状は次第に劇症化していくことを考えると、自分がどういう状況にあるか理解できないままに飛行機に乗ったと思われる。
いずれにしてもこの病気には明確な治療法もワクチンも存在していない。日本人の感染者はまだいないとはいえ、この「ニパウィルス」という病気は今回の衝撃的なニュースとともに記憶しておくべきだろう。
日本人にはこちらが脅威。体を溶かす病気「人食いバクテリア」がもたらす病気
以前テレビで見たことがあるのだが「溶連菌」という子供が罹る病気がある。この病気は「A群溶血性レンサ球菌」という細菌が引き起こす病気で、咽頭炎、扁桃炎、しょう紅熱などを引き起こす。
オルコット著「若草物語」でベスが掛かった「しょう紅熱」として知られているこの病気は抗生物質という治療法が確立しており、現在はきちんと薬を飲めば治療できる病気であるが、家族に移りやすいことから注意が必要だ。
予防は手洗い、うがい、タオルやコップを分けるなどの一般的な対処法があるのだが、問題はこの「A群溶血性レンサ球菌」が喉から血液中に入り、劇症化したときだ。
こちらがテレビで取り上げられていた「人食いバクテリア」のことだ。テレビでのケースでは手にあった傷に土いじりの最中、この菌に感染したと紹介されていた。
足や手などの傷にこの菌が入り込むことによって感染する危険があるので、傷には注意したい。
初期症状は手足の痛みと腫れ、発熱、次第に手足の壊死、多臓器不全などを起こし30%の人が亡くなるという恐ろしい病気である。こちらはこの記事で取り上げた「ニパウィルス」と比べ、より日本人に関係する可能性が高い病気であることから追記として取り上げた。
追記 「こういう病気がある」ということは知っておくとよい
尚、ブログ主の妹もこの子供の罹る「溶連菌」に感染してさまざまな症状で生活を制限されたが、ブログ主には溶連菌は感染していない。また、特に上記の「うがい、手洗い、コップタオルを分ける」等知識がなかったためそれもしていなかった。
上記の記事の「人食いバクテリア」はありふれたものではないので、過度に恐れて過敏になるとかえって良くないと思う。
ただ、先ほども「ニパウィルス」の項でも取り上げたが、手や傷に切り傷があり、そのあとに手足の痛みと腫れ、発熱などが起きた場合「こういう病気の可能性がある」ということを知っているだけで助けになる知識だと思う。
テレビでの事例も医師が「人食いバクテリア」に気づいたために命拾いした、という展開だった。
実験医学増刊 Vol.33 No.17 感染症 いま何が起きているのか 基礎研究、臨床から国際支援まで〜新型インフルエンザ、MERS、エボラ出血熱…エキスパートが語る感染症の最前線
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