ミステリー・マンとは何者か 後編 「ロスト・ハイウェイ」感想⑥


謎だらけの「ミステリー・マン」の正体を考えるにあたり

A.超常的な存在 B.実在の存在 という二つの分類をしました。

Aに含まれるのはフレッドの空想上の存在、妄想の現れ、霊的な存在という想定、Bに関しては「ミステリー・マン」が実際の体を持った人間、つまり実在している人間という分類です。

前回の⑤では「ミステリー・マン」の正体がA.「超常的な存在、または空想上の存在」という前提で推測してきました。


では今回の⑥ではB.「実在の人間説」について推測していこうと思います。

 

注:今回も勝手な推測を書き綴っています。

映画を見ていてあれこれ浮かんできたことを書いていますので、全く謎解きの手助けにはならないことをあらかじめお断りしておきます。

あと非常に長いのでご注意ください。後編に分けました。

 

彼は「ディック・ロラントの友達」それは事実に思える

 

まず彼が「ディック・ロラント(エディー)の友達である」ということを事実だと判断した材料はふたつ。

〇パーティ会場で「ミステリー・マン」が一体誰なのかと尋ねたフレッドがアンディに「ディック・ロラントの友達だよ」と言われたシーン。

〇ピートの元にエディーから脅しの電話が掛かってきた場面。「私の友人に電話を代わるか?」と言われて「ミステリー・マン」がピートと話すシーン

この二つの点に関しては、いくらフレッドが「信頼できない語り手」であったとしても、フィルターを掛けたり嘘で塗り固める必要はないと感じます。

なぜなら、その点に関してはフレッドが嘘を付いてもなんのメリットもないからです。なので今回はこれ以降「ミステリー・マンはエディーの友達である」という点を事実だとして考察します。

 

彼はエディー(ディック・ロラント)に雇われた「脅し屋」または「トラブル・シューター」なのでは

ディック・ロラントには特に描写がありませんが、エディーはアングラのにおいがプンプン匂う男です。暴力も辞さない。自分を煽る人間はボッコボコにしなければ気が済まない。

女と金には不自由しない。銃をちらつかせ、笑顔で脅迫が出来るちょっと「一本飛んでいる」男です。

当然、周囲にいるのもゴツい強面の男たち。エディーがすこし顎をしゃくって見せたり、または目線で合図を送ればすぐにその意図を叶えるであろう忠実な男たちです。

「ミステリー・マン」は彼らと一線を画した「脅し屋」または「トラブル・シューター」なのではないか。

「脅し屋」というのは脅迫するという意味ではなく、じわりじわりと相手にプレッシャーを与えていく意味での言葉です。

例えばよく使われる言葉として「娘さん、いらっしゃるんですね。学校の帰り、心配ですね」のような脅し文句。

(この手の脅し文句は映画「JFK」でもギャリソン判事の家にそういう電話が掛かってきていました。地味ながら、精神攻撃に効く手段ですね)

彼は暴力ではなく、こうした強い言葉を使わずに相手を委縮させていく手段に長けたプロなのではないか。

または「トラブル・シューター」として、暴力担当の「強面の男たち」ではなかなか解消し辛い「難しい案件」を収める役割を担っていたのではないか。

つまりエディーとは「友人」ではなく完全な雇用関係にあるのではないかと推測できます。

それを便宜上エディーは「友人」と言ったのかもしれません。実際友人関係で、いくらかのお金を貰ってエディーの面倒ごとを片付けていたという可能性もありますが。

 

なぜ手っ取り早く暴力で解決しないのか。嫉妬心があるからネチネチやりたい

まず「ミステリー・マン」がエディーの意を叶える存在であったとして、なぜパーティでフレッドを脅して怯えさせたり、ピートを電話口でじんわり脅したりするのでしょうか。

いずれもこの場合キーポイントになるのは女(レネエ、アリス)と思われます。

レネエはディック・ロラントの情婦であり、アリスはエディーの情婦であるのはほぼ確実だと思いますが、ディック(エディー)にとって、自分の女を若造に奪われた、というのは非常に忸怩たるものがあったのではないか。

一時的にしても「他の男に自分の女が目を向けた」という事に彼はキレている。

彼の怒り方は、通常「車を煽った男をボコボコに痛めつける」というどちらかというと単純明快な報復の仕方をとるようなタイプに見えます。

しかしフレッド(ピート)には「ミステリー・マン」に「いつもお前のうちに居るぞ」「つまりいつでもお前の前に現れられるんだぞ」という脅し方で精神攻撃を仕掛けている。

なぜこんな回りくどいやり方をとる必要があるのかといえば、それは相手がその言葉一つで右往左往し、怯える時間をじっくりと楽しみたいからではないか。

ピートの件ならば車工場で銃を突きつけた段階で脅しは終了しているはずです。しかしさらにエディーは電話をかけてきて「元気か?問題はないか。そうか。なら良かった」に加え「ミステリー・マン」にじんわりとした脅しを言わせるなど、さらに恐怖を与えることまでしています。

ではフレッドの場合はどうか。

平穏に落ち着いたレネエがフレッドに愛想を尽かすのが一番効果がある、と考えたのでは。
フレッドとレネエが(表面上は)平穏な家庭生活を営んでいることに不満を抱き、彼らの家庭を破壊することによって彼女を取り戻そうとした
という嫉妬説はどうでしょうか。結果「ミステリー・マン」にアンディ宅のパーティで煽られたフレッドは混乱した状態のままで不満げなレネエを無理に会場から連れ出し、さらには帰り着いた自宅で怪しい影の幻想を見て半狂乱で自宅の中を点検します。
車に戻ってみると、完全に白けきった顔のレネエに冷たくあしらわれます。「ミステリー・マン」の思わせぶりな仄めかしが完全にフレッドに効いてしまっています。
いわば「猜疑心の種をまく」それが「ミステリー・マン」の真骨頂なのではないかと思ってしまいます。

 

結局ミステリー・マンは実在の人物?空想の人物?答えは「両方」だと思うのです

 

これまで長々と「ミステリー・マン」の正体について述べてきましたが「両方」って・・・。

「ミステリー・マンは実在する人間説」の要旨をまとめます。

フレッドは神経衰弱気味で些細な言葉で暗示にかかりやすい状態であった

・ディック・ロラントは、レネエ絡みで精神的にフレッドを弱らせたかった

・友人(ミステリー・マン)に依頼。フレッドが疑心暗鬼になるように思わせぶりなことを言うよう依頼

 

・フレッドに付いていけなくなったレネエがフレッドを見限り、自らの意志で自分の元に戻ってくるのが狙い。

・実際に存在する「ディック・ロラントの友人」にすぎない男と言葉を交わし、思わせぶりなことを言われたため、フレッドの中で彼が「自分を監視している人間」として実体化されてしまった。

 

・元々疑心暗鬼気味で不安定になっているフレッドは、この「ミステリー・マン」の言動が自らの「誰かに監視されている、誰かにじっと見られている気がする」という「監視ビデオ妄想」を補強してしまった。

 

「ミステリー・マン」は実在の人間説はこんな感じで考察してみたのですが・・・

フレッドの中にしかいなかった、顔も知らぬ姿も知らぬ「どこの誰だかは分からない、自分たちを監視している存在」が、実在の男(ディック・ロラントの友人)によって裏打ちされてしまい、フレッドの中で実像を持ってしまった、ということです。

「フレッドの中にいた空想上の存在」と「実在する怪しげな男」がミックスされた人物、それが「ミステリー・マン」の正体ではないか。

「実在する人間説」は以上です。

次回は「ディック・ロラントは死んだ」の言葉の謎について考察していこうと思います。

 

 


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